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「銀杏舞う 並んで歩く 帰り道」

2008年10月17日 00:01

「銀杏舞う 並んで歩く 帰り道」

 時は放課後、授業終わりの帰り道。
適当に掃除を済ませ、級友達と一通り雑談を交わした後鞄片手に帰路を行く。
別段急ぐわけでもなく、のんびりと空を見上げながら歩いていた。
見上げた空は突き抜けるように高く、遥かな彼方へ通ずる空はその果てを見せず、その圧倒的包容力を持って僕らを包む。
ただそれだけ。
静寂を秘めた冬やひたむきに明るい夏、暖かくもどこか奥ゆかしい春も大好きだけど、透き通るような秋空が何より好きだった。
校門を出てから十分、鮮烈な黄色に染まる銀杏の大木の横を過ぎ、二つ目の信号を渡る。
吹き抜けていく風は少し肌寒くも清々しい。
信号を待つ間、何をするでなく風に舞う黄色い落葉をぼんやりと眺めていた。

その時だった。
後ろから誰かが弾むように軽やかに駆けて来る音と、次いで背中にバシンッという強い衝撃。
「誰だっ」
一応怒鳴ってみるが、誰であるかはわかりきっている。
僕にこんなことをする奴は今のところ世界で唯一人、あいつしかいない。
「やっほ、私私」
振り返ると予想通り、幼馴染がにかっと悪戯な笑みを浮かべて、いかにもしてやったりという顔で立っていた。
駆けて来たせいか、若干顔が紅潮している。
「やっぱりお前か」
「ふっふっふ、あの程度の攻撃避けられないなんて、まだまだあんたも未熟者ね」
「はいはい、どうせ俺は未熟者のぺーぺーだよ」
苦笑を向けてやると、活発そうな大きな瞳を再び細めて「精進しろよー」などと言ってくるものだから、こちらもつられて笑ってしまう。

「そういえばお前、今日は部活どうしたよ?」
「んー?あー今日はお休み。顧問の山っちが出張って」
「あー、そういや五限目の物理は自習だったっけ。あいつの存在ごと忘れてたわ」
「うわ、ひっど」
「だってあいつ影薄くない?」
「まあそれは同感かなー」
「って自分の部の顧問くらいかばってやれよ」
「だって弁護のしようも無い事実だし」
「お前も十分酷えよ」
一度青信号を渡りそびれ、再び青になるのを待ってから、家に向かって再び前へ。
さっきと違って足音は二つ、ゼロだった笑い声も二つに増えて、透清たる秋空へと吸い込まれていく。
帰り道のBGMは静かな風の音もいいけれど、取り留めの無い会話の声だって捨てがたい。
「いいもんだなあ」
「何が? 」
会話の合間に思わず口をついて出てしまった言葉に、華菜は怪訝な顔で聞き返してきた。
少し恥ずかしかったから、思いっきり華菜の頭をわしゃわしゃしてごまかしてやった。
偉い、偉いをするように。
「ちょっ、ちょっと何するのよっ」
華菜は顔を真っ赤にして睨んで来たが、不思議なことにいつもの張り手は飛んでこなかった。
口では嫌がっているけれど、本人自身はされるがまま。
「馬鹿……」
それだけ言うと、顔を真っ赤にしたまま視線を伏せて、黙りこくってしまった。
なんだかその様が異様に可愛くて、思わず調子に乗ってもう一度なでなで。

伸びる影、足跡二つ、笑い声。
そうして今日も過ぎてゆく。
赤い夕日を背にして。
バチンと一つ、いい音を響かせながら……

(11/17投稿)


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