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零と羊飼い

2008年12月06日 23:24

暫くぶりに読みきった小説。
ここ暫く、あんまり読めていないし、ずいぶん読む速度も遅くなったなあと、少し悲しい。
さあさあ、まだまだ多いぞ、積んでる本は。

で、今日はタイトルの「零と羊飼い」について少し。
この作品は、工画堂スタジオが出したキネティックノベルを基にしたオリジナルのノベライズ版ということで出版された作品で、そちらをプレイした上で読むとより楽しめるとの事でしたが、別段やっていなくても問題はありませんでした。

あらすじは地球に直径100kmクラスの隕石が接近。
これを破壊するために「自らが受けたあらゆる力をそっくりそのまま相手に反射する」という、レス系と呼ばれる異能者(超能力者)が集められた。
そして集められた異能者達はそれぞれ話し合い、その中から一人、ノアと言う名のシャトルに乗って隕石に向かって打ち出される。
そして、打ち出されれば帰ってこられることはない。
集められた3人の異能者達のうち、誰がシャトルに乗ることになるのか。
そんな感じの話です。

内容について、やはり著者がゲームのシナリオライターなだけあって、ノベルゲじみた構成が成されています。
ここは好む人とアレルギーが出る人が居るかも知れません。

描写について、さすが対話による「殺し合い」に主眼を置いているだけあって、彼らの舌戦や各々の腹の内など、非常によく出来ています。
また最後の時を過ごす彼らと彼らのパートナーとの時間の取り方なんかも、殺伐とした「話し合い」とかけ離れていたり、より殺伐としていたりと、対比の仕方やキャラごとの個性・過去からの繋がりなんかもよく出来ています。

ただ、結末については、頷く人とアレルギー出る人とはっきり分かれそうかもしれない。
と、いうか、実の所後半の方は割りとわけが分からなくなりがちな展開&構成。
破綻はしていないので著者の西川真音氏の力量は確かなのだと思いますが、これは明瞭さに欠ける。
無論それ自体が悪いとは言いませんけど、ちょっと混乱させてしまうかもしれません。
そしてあの結末は、上手く考えたと思います。
でも人によっては悪く言えば投げ遣りという感想が出てくることでしょう。

文章についてはそんなところでしょうか。
イラストについては、私には文句のつけようがございません。
と、言うのも、カバーイラスト見てのジャケ買いでしたのでww
イラストレーターはしろ先生
美麗イラストですww

さて、総じて評するならば、当たりの部類に入る作品だったと思います。
作り自体ちょっと枠から外れた感じのする代物なので何ともでしたが、中々面白かったです。
また機会があればどうぞ。

にしても、ジャケ買いヒット率が地味に高いのは、小さな自慢だったりww

零と羊飼い

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「銀杏舞う 並んで歩く 帰り道」

2008年10月17日 00:01

「銀杏舞う 並んで歩く 帰り道」

 時は放課後、授業終わりの帰り道。
適当に掃除を済ませ、級友達と一通り雑談を交わした後鞄片手に帰路を行く。
別段急ぐわけでもなく、のんびりと空を見上げながら歩いていた。
見上げた空は突き抜けるように高く、遥かな彼方へ通ずる空はその果てを見せず、その圧倒的包容力を持って僕らを包む。
ただそれだけ。
静寂を秘めた冬やひたむきに明るい夏、暖かくもどこか奥ゆかしい春も大好きだけど、透き通るような秋空が何より好きだった。
校門を出てから十分、鮮烈な黄色に染まる銀杏の大木の横を過ぎ、二つ目の信号を渡る。
吹き抜けていく風は少し肌寒くも清々しい。
信号を待つ間、何をするでなく風に舞う黄色い落葉をぼんやりと眺めていた。

その時だった。
後ろから誰かが弾むように軽やかに駆けて来る音と、次いで背中にバシンッという強い衝撃。
「誰だっ」
一応怒鳴ってみるが、誰であるかはわかりきっている。
僕にこんなことをする奴は今のところ世界で唯一人、あいつしかいない。
「やっほ、私私」
振り返ると予想通り、幼馴染がにかっと悪戯な笑みを浮かべて、いかにもしてやったりという顔で立っていた。
駆けて来たせいか、若干顔が紅潮している。
「やっぱりお前か」
「ふっふっふ、あの程度の攻撃避けられないなんて、まだまだあんたも未熟者ね」
「はいはい、どうせ俺は未熟者のぺーぺーだよ」
苦笑を向けてやると、活発そうな大きな瞳を再び細めて「精進しろよー」などと言ってくるものだから、こちらもつられて笑ってしまう。

「そういえばお前、今日は部活どうしたよ?」
「んー?あー今日はお休み。顧問の山っちが出張って」
「あー、そういや五限目の物理は自習だったっけ。あいつの存在ごと忘れてたわ」
「うわ、ひっど」
「だってあいつ影薄くない?」
「まあそれは同感かなー」
「って自分の部の顧問くらいかばってやれよ」
「だって弁護のしようも無い事実だし」
「お前も十分酷えよ」
一度青信号を渡りそびれ、再び青になるのを待ってから、家に向かって再び前へ。
さっきと違って足音は二つ、ゼロだった笑い声も二つに増えて、透清たる秋空へと吸い込まれていく。
帰り道のBGMは静かな風の音もいいけれど、取り留めの無い会話の声だって捨てがたい。
「いいもんだなあ」
「何が? 」
会話の合間に思わず口をついて出てしまった言葉に、華菜は怪訝な顔で聞き返してきた。
少し恥ずかしかったから、思いっきり華菜の頭をわしゃわしゃしてごまかしてやった。
偉い、偉いをするように。
「ちょっ、ちょっと何するのよっ」
華菜は顔を真っ赤にして睨んで来たが、不思議なことにいつもの張り手は飛んでこなかった。
口では嫌がっているけれど、本人自身はされるがまま。
「馬鹿……」
それだけ言うと、顔を真っ赤にしたまま視線を伏せて、黙りこくってしまった。
なんだかその様が異様に可愛くて、思わず調子に乗ってもう一度なでなで。

伸びる影、足跡二つ、笑い声。
そうして今日も過ぎてゆく。
赤い夕日を背にして。
バチンと一つ、いい音を響かせながら……

(11/17投稿)

死神のキョウ

2008年07月27日 17:26

とりあえず溜まっていたレポートを片付ける傍らこれまた溜め込んでしまっていた小説を一つ片付けました。

死神のキョウ」と言うタイトルの作品で、keyでシナリオライターをされている魁さんの小説です。

作品の内容については、総じて良かったと思います。
個人的にドタバタ系学園ラブコメは好きなのでその辺の補正差し引いても、です。

死神と、それに守られることになった主人公のドタバタ話ですが、死神についてこういう解釈もありなのかなと思わせてくれる設定でした。

ただ、本人自らあとがきでも述べられているように、描写表現はやや微妙。
また誤字・脱字、単純な用法ミスが少々目立っているのは残念ですが、さすが名作ゲームのしなりを手がけてきただけあってやり取りや掛け合いはお手の物、と言った感じで、楽しませていただきました。

結論から言えば、あんまり細かいところまで気にしなければとても楽しめる作品だと思います。
個人的には好きですね。

あとがきでこれの続き書くっぽいこと言ってたので、続きに期待ww

あ、そうそう。
ヒロインの名前、また「キョウ」か。
他に名前考えつかんのか。とか、
思い入れ強すぎだ。とか、
シリーズかよ。とか、
その辺突っ込んだら負けだと思いますw


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